no.04 The Casa For Mr.U's

敷地は鳥取市郊外に位置する分譲地です。東南西の三方を隣地に囲まれていますが、北側には広大な田園風景が広がっています。この眺望に期待して、リビング・ダイニング・キッチンは2階に計画しました。暮らしの中心となるであろうこの空間に、最大限のヴォリュームを配分したいと考えました。獲得した広さは約20帖、天井高4m。北側から美しい風景を取り込み、南側のテラスへと続いています。このテラスは、時に開放感あるもう1つの部屋として、時に光、風、雨などの自然環境を楽しむ装置として機能し、暮らしに豊かさをあたえます。 「小さな箱にゆったりと暮らす」そんなテーマがここで実現できたように思います。
Data: ○所在地/鳥取市国府町○用途/専用住宅○家族構成/夫婦+子ども2人○構造/在来木造○規模/地上2階建て○設計期間/2006年3月~2006年8月○施工期間/2006年9月~2007年3月○敷地面積/264.44m2○延床面積/128.96m2
平面図
詳細
リビング・ダイニング・キッチン


U邸の中核となる、20帖の広さと4メートルの天井高を誇る、大きなリビング・ダイニング・キッチン。U氏の希望であった「家族みんなが同じ場所で過ごす」ための舞台です。
この部屋の中央に位置するのが、アイランド式のキッチン。右の写真に見えるキッチンの手前がダイニング、挟んで反対側がリビングとなっています。キッチンからの双方へのアクセスが非常に簡便なレイアウトです。
リビング側の窓からは、心癒される田園風景が一望できます。また、このリビングにかかる梯子は、子どもたちの遊び場としても大活躍のロフトへと続いています。下の写真の、天井付近の壁に設置された丸窓はロフトへと繋がっており、キッチンから「ごはんだよ~」と声をかければ、丸窓から子どもたちが顔をひょっこり出して「は~い」。
一室空間で暮らす楽しさ、幸せを存分に感じられるスペースとなっています。
テラス

リビング・ダイニング・キッチンの開放感をより高めてくれているのが、ダイニングと繋がっているテラス。窓を完全に開けてしまえば、床続きの「もう一つの部屋」が生まれます。 大きな窓がありながらも、プライバシーを確保するための壁を設けているので、家族や気のおけない仲間だけで、ゆっくりと過ごすことができます。
洗面所・トイレ

細かなタイルがキュートな洗面所。トイレも併設されています。
奥に見えるのが、収納力ばつぐんのウォークスルークローゼット。階段から上がってきてそのままクローゼットへ。コートをかけてカバンを置いたら、トイレへ行き、洗面所で手を洗ってリビングへ。
無駄のない、流れるような動線です。
階段室

U邸の自然な動線を生み出す、光いっぱいの階段室。
特別記事: 「ゆったり暮らそう。小さな家で、家族みんなで。」
「ご家族4人が暮らす家にしては、小さいと思うのですが」 僕の施主への質問は、これだった。
PLUS CASAの4つめの住宅、U邸。施主の職業は建築設計士。建築のプロであり、つまりPLUS CASAの小林と同業者である。そのU氏がなぜ、夢のマイホームの図面を、自身で引かなかったのか? なぜ同業者である小林に依頼することになったのか?
「もちろん最初は、自分で設計しようと考えていましたし、図面も引きました。しかし、いざやってみるとこれが難しい。決まっていたはずの優先順位が曖昧になったり、あれもこれもと色んな要素を取り入れたくなってしまって。結果的に、図面は完成しなかったんです」
家がかたちづくられていく要素、条件は様々だ。家族の数だけ理想の家があり、家族を構成するその一人ひとりがまた、異なる理想を持っている。予算や土地形状などの条件も含めていくと、家を建てるということは、膨大な種類の糸を紡ぎ、美しくも機能的な織物を編んでいく作業のように思える。小林は、U氏と彼の家族の家に対する理想や、必要要素を客観的にまとめる作業に時間をかけている。これはU氏が「自邸の設計」という作業が持つ公私の境の曖昧さゆえに、特に難しさを感じていた作業だ。
幸い、U氏には、家を建てるうえで絶対に譲れないものがひとつだけあった。小林はこの点の実現に、ほとんど全ての労力を注いだ。もちろん、その他の部分は二の次、では、住宅としての完成度は低くなる。家族4人が住まうための必要な機能を、十分以上に満たしてはじめて、重きを置いた空間が生きてくるからだ。
完成したU邸は、小林がU氏に対して提案した最初のかたち、ほぼそのままだという。「この家でどう暮らしていきたいのか」という点が明確になれば、その答えとしてのかたちはやはり、シンプルなものへと収斂されていく。
最初の質問に、U氏は笑いながら答えてくれた。
「家族みんなでひとつところで過ごしたい。そうできる家が欲しかった。それに必要な大きさが、このサイズだったんです。自分で図面を引いていた時は、色んなものを付け加えてしまった。でも結局僕らが求めていたのはそれだけだったし、この家はそれを100%満たしてくれている。僕たちの家は本当に気持ちがいいし、楽しいですよ」
(文: 和多瀬 彰 MAGAZINE PLUS CASA vol.4より)