no.06 The Casa For Ms.E

鳥取市街地、中心部。開口6メートル、奥行41メートル。この特徴的な敷地にクライアントは、服飾雑貨店+洋裁教室+アトリエ+オーナー住居を計画し、店舗の一部を除いて、平屋建てを希望されました。
多くの用途の混在を成立させる平面構成と、都市における快適空間の確保という2つの要件を解決する必要がありました。そこで、前面道路から奥に行くほどプライベートな空間となるよう居室を配列し、そこに4つの中庭を点在させました。それらの繋がりによって多様な機能と快適な動線、「外に閉じて内に開く」空間を実現しました。
季節や時間で変化する陽の光、雲の流れ、風が運んでくる香りなど、どこにいても楽しめる暮らしや営みは、都市の中で一層、快適に感じられることでしょう。
Data: ○所在地/鳥取市職人町○用途/住宅兼店舗○家族構成/1人○構造/在来木造○規模/地上2階建○設計期間/2006年10月~2007年3月○施工期間/2007年3月~2007年10月○敷地面積/235.18m2○延床面積/161.95m2
平面図
詳細
テラス

高い壁に囲まれているにもかかわらず、非常に高い開放感を生み出す、E邸のテラス。お茶を飲んだり、軽い食事をとったりとフル活用されている。「ギリシャの青空」とEさんの話すテラスから見る空は、残念ながら撮影日は天候が優れず。テラスに置かれた植物の緑と、テラスの茶色、壁の白のコントラストがきれいです。
渡り廊下

駐車場からテラスへと繋がる通路。薄暗い通路から、白い壁と青い空の開放的な空間へと開ける仕掛けは、退屈になりがちな日常に、ちょっとした喜びを与えてくれます。
リビング・ダイニング・キッチン


キッチンと隣接する和室。キッチンはリビング、ダイニング、そしてテラスへと繋がり、和室は坪庭に面しています。さまざまなところから外部へとゆるやかに繋がり、光と風が流れ込む構造となっています。
縦に長い敷地に計画された縦長の住宅、廊下も長いです。
特別記事: 「空が青いことを教えてくれる家。」
「小林さんたちが、感じの良さそうな人だったから」と施主のEさんは答えた。
僕はこれまで、何人かの家を建てた人たちに会い、話を聞いてきた。結果、彼らがかなり明確に、2つのグループに分かれることが分かっている。強い思い入れを持って建築計画に臨むグループと、拍子抜けするほど(時に何も考えていないのでは?と思えるほど)あっさりと捉えているグループだ。
Eさんは明らかに後者のタイプだ。冒頭の言葉は、「なぜPLUS CASAに設計を頼んだのか?」という質問に対しての答えだ。以下に、僕と彼女のやりとりの一部を抜粋してみよう。
_模型を見たとき、どう思いましたか?
「今どきの建築はすごいなと」
_計画の中で、ここだけは譲れないポイントはありましたか?
「小さな寝室があれば」
_テラスはあなたのリクエストですか?
「小林さんが付けてくれたんです」
この肩の力が抜けたEさんの依頼に、PLUS CASAの小林は逆に、緊張したようだ。店舗部分の雰囲気を、以前のそれとは大きく異なるものに仕上げ、一新させたことに「施主や常連客に受け入れてもらえるか」心配したという。施主から具体的な要求が少ない場合、しかしカタチにして提示しなければいけない建築家は、かなりのプレッシャーを感じるものと思われる。
と、Eさんがおもむろに言葉を繋ぐ。
「そういえば、この家に入ってから気づいたことがあるんですよ。鳥取の空がとても青いということです。テラスの壁が白いでしょ。そのせいかと思うんですけどね。ここはギリシャかサンフランシスコかって思ってしまうくらい(笑)。あとね、テラスの壁が高いから、最初は窮屈に感じるんじゃないかって心配してたんですよ。実際は逆でしたね。プライバシーが守られているからか、むしろ開放感がすごくあるんですよ。気持ちを開放してくれると言いますかね。これは家全体に言えることですけどね。いつもどこかから光や風が入ってきてね」
空が青いと気づかせてくれた家。こんな素敵な表現、僕は聞いたことがない。
「この家には、親戚や知人が自然と集まってくるんですよ。気持ちがいいんでしょうね。テラスでお茶を飲んだりして、すごく満足して帰っていくんです。私もお店で気持ちよく仕事できますしね。この家を小林さんに頼んで、良かったと思っていますよ」
(文: 和多瀬 彰 MAGAZINE PLUS CASA vol.5より)