no.07 The Casa For Mr.S's

前面に旧袋川が流れ、川越しに大きな桜の木が2本。その先には久松山も望むことができる。市街地とは思えないほど豊かな環境は、南側を住宅にふさがれていると言うだけの理由で、意外にも不動産評価としては低いものでした。土地探しも依頼されていた私たちは、数ある候補地の中から、迷わずこの土地をお勧めすることにしました。
北側に広がる豊かな風景と、住宅上部からの採光を考慮し、暮らしの中心となる諸室は2階に計画。最大限の床面積確保、ライフスタイルの変化に対応する柔軟性などの条件は、シンプルな平面構成を生みました。
S邸には、市街地での計画にこれまで私たちが提案してきた「中庭」はありませんが、「街という庭」を楽しむという、単純でありながら困難な課題をクリアすることで、より豊かな暮らし方を提案をできたと考えています。
Data: ○所在地/鳥取市吉方温泉○用途/専用住宅○家族構成/夫婦+子ども3人○構造/在来木造○規模/地上2階建○設計期間/2008年2月~2008年7月○施工期間/2008年7月~2008年11月○敷地面積/124.88m2○延床面積/89.83m2
平面図
詳細
リビング


S邸の生活の中心となる2階リビングと、大きな窓からの景色。久松山や、旧袋川の土手が季節のうつろいを告げる。
キッチンは家具制作のsmall。S氏はデザイン面、S夫人は機能面に強いこだわりをもって制作を進めた。最後まで悩んだトグルスイッチは、英国製のもの。
天井近く、南側に切り取られた窓から落ちる光が、空間の高さを強調する。
子どもの部屋(1階:フリースペース)

1階の総面積の大半を占める、広々とした子ども室。天井からはS氏がIKEAで購入したブランコが揺れている。左奥に見える滑り台は、PLUS CASAがオリジナルで作成したもの。
テラス

北側に設置されたデッキテラス。旧袋川や土手など、中心市街地とは思えない自然を身近に感じることができる。市街地の向こうに、久松山も望む。
土手向こうには桜の木が見え、花見の季節には特等席となりそう。
周囲の環境

空が大きく広がり、目の前を両脇に自然を残した旧袋川が静かに流れる。豊かな自然環境だ。
写真
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特別記事: 「両立する家。」
鳥取市のほぼ中心に位置する住宅街に建つS邸。この家で不思議なほど自然を身近に感じることができるのは2階、リビングダイニングの端から端まで大きく開かれた窓のおかげだ。目の前を流れる旧袋川の、川べりに残る緑。丸くなって寒さをしのぐ水鳥が数羽、川に浮かぶ。両岸の土手には桜の木が並び、その向こうに、鳥取の町を見下ろす久松山が見える。
この窓の前に立ち、1年を通じた窓景の移ろいを想像しないわけにはいかない。
「半分以上、この家は子どものために建てました」 家族が増え、成長に伴って手狭になってきたマンションからの転居を検討せざるを得なくなったSさん一家が、マンションではなく一戸建ての住宅に決めたのは、子どもたちが自由に遊べる大きな部屋のある家にしたかったからだった。そして、それは実現された。1階の総面積の大半を占めるフリースペースの天井から、Sさんがあらかじめ購入していたブランコが揺れている。
子どものいる家は、当たり前のことだが、「子どものいる家」になる。汚れるから、壊れるからといった理由で、「子どものいる家」仕様の家具や日用品を、ある意味、妥協して選ぶ家庭は、多いのではないだろうか。
「でも、デザインを犠牲にしたくはなかったんですよ。シンプル且つ個性的なデザインが好きで」
Sさんのそのこだわりは、玄関の扉や浴室のデザインはもちろんのこと、屋外に設置された配電盤や自前で用意した洗面台、ロフトに置かれた照明器具にまで及ぶ。鳥取の若手職人に依頼したオリジナルキッチンをはじめ、テレビ台や収納などの家具やインテリアは、有名デザイナーから地元のデザイナーのものまで、幅広い。
家を建てるとき、こだわりと妥協がどうしても必要になる。S邸にも妥協した点はたくさんあったに違いない、しかし。
遊びたい子どもは思い切り遊ぶ。おとなたちは、お気に入りのデザインに囲まれて映画や音楽を楽しむ。そして、家族みんなで美しい景色を眺めながら、食事を楽しむ。Sさんは、おとなも子どもも気持ちよく暮らせる、そんな家をつくりあげた。
(文: 和多瀬 彰 MAGAZINE PLUS CASA vol.6より)
