no.01 The Casa For Mr.A's  クリアシリーズ

PLUS CASA xyloシリーズ no.01 A邸の写真

環境への高い意識から、使用する素材や工法、設備などに明確なビジョンとこだわりをお持ちの依頼主の要望は、「家族が楽しく、健やかに暮らせる家」でした。 それらを踏まえ、ご家族共通の楽しみである「料理をつくること、食べること」を中心に計画を進めました。
南面に広がる家庭菜園からデッキテラス、ダイニングキッチンへとつながる配置は、建物内外の一体的な利用性を高め、家族間やご近所との豊かなコミュニケーションを育む場となることを期待して計画。内部を上下につなぐ吹き抜けは、夏には越屋根から海風を取り込み、冬は薪ストーブの熱を家全体に運ぶようにと考えました。 意匠的に多用した「木」という素材は、空間に舞う自然の光や風、緑などと相まって、我々の予想を超えた心地よさを、建築に与えてくれることとなりました。

Data: ○所在地/鳥取市湖山町○用途/専用住宅○家族構成/夫婦+子ども4人○構造/在来木造○規模/地上2階建○設計期間/2007年3月~2007年7月○施工期間/2007年7月~2008年2月○敷地面積/330.00m2○延床面積/149.28m2

平面図

1階 / 2階 / ロフト / 越屋根

詳細

吹き抜け

A邸の吹き抜け

1階のリビングから2階、ロフトを経由して、越屋根まで抜ける吹き抜け。はじめてA邸を訪れる人は、圧倒されるに違いない。夏は暑さを逃し、冬は暖炉の暖かさを家全体に伝える機能を持つ。
光もこの吹き抜けを通して、家全体に広がる。1階に灯された光が家中の窓から漏れ、「夜、外から見ると全部の部屋の電気が点いているように見えるんですが、実際にはリビングの電気しか点いてないんです」とは施主の弁。

キッチン・リビング・ダイニング

A邸のキッチン・リビング・ダイニング

「食」が家族共通の楽しみであるというA邸の中心に位置するキッチン、リビング、ダイニング。

ダイニング

A邸のダイニング

障子から漏れ入る光が、柔らかく部屋を照らす。和紙、土壁、木などの自然素材、和素材はその相性も良い。

暖炉

A邸の暖炉

建築計画にどうしても加えたかったものの1つ、暖炉。これだけで家全体を暖める。上部には鍋を置いて料理することもできる。

土間

A邸の土間

建築計画にどうしても加えたかったもう1つのもの、土間。「汚しても良い室内」である土間は親族の畑仕事、家庭菜園を楽しむA夫妻には重宝する空間。3枚の杉戸を開け放つと、大きな開口となって外部からの空気が流れ込む。流れ込んだ空気は越屋根を通じて抜け、家全体の空気を清浄する機能も果たす。

庇(ひさし)

A邸の庇

長く突き出た庇(ひさし)。A氏の要望だったが、実現には高い大工技術を必要とする。

珪藻土仕上げによる土壁

珪藻土仕上げによる土壁

A邸の内部壁は、竹小舞土塗り壁。仕上げには、断熱性や遮音性、耐火性、調湿に優れる珪藻土が採用されている。経年変化に対するメインテナンスを家族でできるよう、仕上げの左官作業に家族全員で参加した。

写真

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特別記事: 「調和する家。」

話を聞けば聞くほど、興味が沸く。「この家のことをもっと知りたい」 施主のAさんの話を聞きながら、そう感じた。

「日本の伝統や技術で家を建てたかったんですね。伝統や技術とは、長い歴史の中で培われた知恵そのものです。自分の家を建てることで環境に余計な負荷を与えたくなかったし、いつか家が自然に還っていくような、そんな家づくりがしたかったんです。それには日本の伝統と技術でつくられた家が一番じゃないかと、そう考えました」

PLUS CASAが提案した最初の、だが、練りこまれたプランに、Aさんは同意した。 はじめてA邸の玄関を入った人は、玄関を入ると圧巻の吹き抜けに息を呑むに違いない。1階から屋根にある越屋根まで、約3階層分の高さに空間が抜かれている様は、民家とは思えない迫力だ。この吹き抜けは、夏は暑さを外へ逃がし、冬は薪ストーブで温まった空気を家全体へと送る役目を持つ。天井につくられた越屋根から差し込む光は、吹き抜けを駆けおりて1階を照らし、夜、リビングで灯されたあかりは2階、ロフトまで広がる。また、玄関脇に「汚しても良い屋内」として設置された土間は、物理的にも精神的にも、屋内と屋外をゆるやかに繋いでくれる。親族の畑仕事を手伝うA夫妻には、重宝する空間だ。

Aさんは使用する素材も厳選している。場所ごとに、部分ごとに、何を使用するかを1つ1つ決めた。たとえば、壁の仕上げに採用した珪藻土は、断熱性や遮音性、耐火性、調湿に優れる。今後のメインテナンスも自分たちでできるようにという点も考慮し、珪藻土を壁に塗る仕上げ作業にも家族で参加した。住宅全体に県産材を積極的に使用しているのは、助成金が出るからだけではなく、その土地で育った木々は、その環境や気象条件に最も合う材だと言われるからだ。

ひとつの場所、ひとつの素材が役割をしっかりと与えられている。だから住む人はもちろん、家そのものも活き活きしている。

「最近の家は、消費される家が多いそうです。時間とともに価値が下がり、使いづらくなる。この家はそうではないですよ」 実のところ、このAさんの言葉を正しく理解している自信がない。だが、A邸が時間の経過とともに消費され、廃れていく様子は想像できない。そこに暮らす家族の記憶や経験が、Aさんの家族やA邸をより豊かにしていく。話し終えたあと、僕の頭に残ったのは、そんなイメージだった。

(文: 和多瀬 彰 MAGAZINE PLUS CASA vol.6より)