
500坪の広大な敷地に、既存の土蔵と倉庫を残して、計画は進められました。
ご家族は夫婦、子ども1人、祖母の4人です。
1年を通して安定した採光と、夏の採風を考慮して、すべての居室が南に面し、東西に細長い間取りを採用しました。
また、既存の建物や周囲の景観に調和するように、建物の高さを抑え、2階の諸室は屋根裏空間に計画しています。
昔ながらのライフスタイルを愛するご家族からいただいたご要望がアクセントとなり、K邸を特徴づけることになりました。
Data: 所在地/鳥取県智頭町○用途/専用住宅○家族構成/夫婦○構造/在来木造○規模/地上2階建○設計期間/2008年6月~2009年5月○施工期間/2009年6月~2010年2月○敷地面積/1644.62m2○延床面積/220.00m2
平面図
詳細
リビング

K邸最大の特徴である、囲炉裏部屋。美しい景色を楽しむことができる大きな窓や吹き抜けが、解放感を高める。
2階の床の高さのある書棚は、施主曰く「ここに日本酒をたくさん並べる予定です」とのこと。ご主人の趣味のひとつは釣り。「釣った魚を囲炉裏で焼きながら、日本酒を飲ると最高です」
囲炉裏部屋

K邸最大の特徴である、囲炉裏部屋。美しい景色を楽しむことができる大きな窓や吹き抜けが、解放感を高める。
2階の床の高さのある書棚は、施主曰く「ここに日本酒をたくさん並べる予定です」とのこと。ご主人の趣味のひとつは釣り。「釣った魚を囲炉裏で焼きながら、日本酒を飲ると最高です」
リビング

14畳の広さのリビング。キッチン、客間、囲炉裏部屋の中央に位置する。大きな窓からは美しい田園風景が望める。
客間の床

床の壁が掛け軸の幅に抜かれており、外の景色を掛け軸の絵のように楽しむことができる。
土間、かまど

炊事場として利用されている土間には、Kさんの祖母が以前から愛用するかまどが置かれている。薪で火をくべて料理する昔ながらの空間と様式も、新しくなったK邸に継承された。キッチンと勝手口を接続する機能も果たす。
2階の寝室

屋根裏にある和室。壁が朱色と砂色で構成された大胆な市松模様は、Kさんの奥様のアイディア。
ドーマー式の窓

屋根に設けられた横に長いドーマー式の窓。屋根裏にある寝室を明るく照らしだす。。
特別記事: 旧くて新しい。
「旧くて、新しい家ですかね」
施主インタビューの最後に、僕が決まって聞く、「この家を一言で表すと?」という質問がある。
とてもシンプルだが、施主を一番困らせる質問のようだ。その質問に、施主のKさんは、冒頭のように答えてくれた。その言葉は、僕のメモの中に一番大きく書かれた。
新しい、と聞くと、建築雑誌などに発表されているモダンな建築を想像してしまうのは、僕だけではないだろう。だがそんな先入観は、Kさんの言葉を聞いてから、図面や写真を眺めていて、すぐに解けてしまった。
囲炉裏などはその典型かも知れない。現代の家屋にはまず付いていないが、日本人なら誰でも知っている昔ながらの設備は、強烈なまでに新鮮に見える。施主の祖母が愛用しているというかまど、それが置かれた土間という空間も同様だ。客間の床の壁には小窓が切り抜かれ、まるで掛け軸の絵のように、外の景色を楽しむことができる。2階居室の壁は、朱色と砂色で構成された大胆な市松模様となっている。
それぞれが決して新しい手法ではなく、昔からあるものなのに、現代の家に、現代的に解釈された状態で置かれたそれらは、やはり新しさを感じさせてくれる。
K邸は、バリアフリーの考え方が様々な場所で採用されている。旧来の日本家屋にはなかったこの概念は、K邸に取り入れられた「新しさ」のひとつと言える。
メモに「おばあちゃんが生活しやすいように」バリアフリーにしたかったというKさんの言葉を見つけて、僕はもう一度、図面と写真に目を落とした。
囲炉裏はKさんの夢だった。かまどや土間は、おばあちゃんの生活様式を大切にしたいという思いから。市松模様は実家から連想したという奥さんのアイディアだった。お互いを尊重し、大切にする気持ちが、K邸の要素をひとつひとつ、かたちにしていったのだろう。
旧さと新しさが共存するK邸には、今も昔も、家族を家族たらしめているものがきちんとある。僕は、メモの中の「やさしさ」という言葉をそっと指でなぞった。
(文: 和多瀬 彰 MAGAZINE PLUS CASA vol.6より)
この投稿は 2011 年 5 月 30 日 月曜日 1:14 PM に xylo-:no.04 カテゴリーに公開されました。この投稿へのコメントは RSS 2.0 フィードで購読することができます。 コメントを残すか、ご自分のサイトからトラックバックすることができます。
