M邸は、鳥取市内の住宅街に位置します。夫婦が働きながら子ども2人と暮らす、店舗併用住宅です。小さな子どもたち育児と飲食店経営の両立という彼らの挑戦を、1つの建築でいかにサポートしていけるかが、今回の大きなテーマとなりました。
無理なく営業できるようにと、客席は4坪ほどの空間配分とし、厨房を介して繋がるバックヤードは、子守や家事にも役立つよう配慮しました。2階の生活空間は、将来の変化に合わせて間取りを変更できるよう、ワンルーム形式を採用しました。
「子育てをしながら商売を営む」 一昔前の日本ではよく見られたはずのこの風景は、核家族化が進む現代ではより困難が伴うことが予想されます。この建築空間が、その一助となることを期待しています。
Data
Detail
リビングルーム
4メートルの天井高、広さは約20帖。大きな窓が大量の光を導く。梁の部分で部屋を仕切り、窓側にもうひとつ部屋を設けることができる。
リビングルーム
主となるキッチンは1階店舗の厨房を兼用。リビングに備え付けられたキッチンでは、お茶を入れたりなどの簡易な用途を想定して最小限の設備にとどめている。
ロフト
ロフトも十分な広さを確保。リビングと同様、このロフトも子どもの成長に合わせて柔軟な使い方ができるよう、きわめてシンプルなつくりとなっている。
店舗部
4坪ほどのこじんまりとした店舗。店舗部前面に設けられた小さな庭と、床付近に設けられた窓が、閉じつつもゆるやかに、内部を外部へと繋ぎ、客席に座っていても、どこか開放感を感じることができる。
平面図
- Ba 浴室
- By バックヤード
- C クローゼット
- E 玄関
- K 厨房
- L リビング
- Lo ロフト
- S ショップ
- V 吹き抜け
特別記事: 吟味と挑戦が、愛しい家を生んだ。
モンドリアンの名作「赤・黄・青・黒のコンポジション」を彷彿とさせる、大胆なカーテンウォールサッシが印象的な住宅、M邸。PLUS CASA初となる店舗兼住宅となった案件だ。PLUS CASAといえば「白い箱」を思い浮かべる方も多いと思うが、このM邸の入り口部分は、ほぼ全面が木で覆われており、柔らかい印象が加えられている。
施主のM氏の職業は建築関係。だから、と言うべきか、大変なこだわりを持ってこの建築計画に臨んだようだ。PLUS CASAの小林も語る、「何事にも真剣に取り組み、検討を重ねる、非常にまじめな」M氏の、微に入り、細を穿つこだわりは、「とことん考えに考え抜いて決めましたから、この家のことは、自分自身のように思っています」という言葉に表れている。この言葉を聞いたとき、入居初日でも、電気を消した暗い室内を、自由自在に歩き回るM氏を想像した。
店舗となる部分は、特に重視した部分。プランが確定するまでに、小林と何度も打ち合わせが重ねられたという。店舗部全面に設けられた小さな庭が、閉じつつもゆるやかに内部を外部へと繋ぎ、こじんまりとした空間ながら、客席に座っていても、どこか開放感を感じさせてくれる。
思い切って挑戦した部分もあるという。
「外壁に、耐久性もあり、影のつき方によって表情が変わる波トタンを使ってみたんです。これは僕にとっては挑戦でしたね。どういうふうに仕上がるのか、うまく想像ができなかったんですね」
この挑戦がもたらした結果に、とても満足していると、M氏は語った。
僕には、家を建てるという行為そのものが、そもそもかなりチャレンジングな行為に思える。あんなに大きなものが、全くの想像どおりにできあがるとは思えない。だからこそ、考えに考えるのだろうし、慎重になる。しかし、想像を超えた部分は、思い切ってジャンプしてみるしかない。それには適切な助言と勇気を与えてくれて、そして一緒にジャンプしてくれるパートナーが絶対に必要だと思う。
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