薪ストーブ導入を検討している方に読んでほしい、薪ストーブの話

2011年の東日本大震災をきっかけとして、一般住宅への薪ストーブへの導入が増えています。日本暖炉ストーブ協会が発表している公式販売台数を見ると、2011年以前は8000台前後を推移していますが、2012年は9100台、2014年には1万900台と3割近い伸びを示しています(*)。

一般社団法人 日本暖炉ストーブ協会HP 統計資料引用:一般社団法人 日本暖炉ストーブ協会HP 統計資料

2017年に入って再び8000台に下がり落ち着きを見せているものの、薪ストーブを求める声は建築を生業にしていると、やはりよく耳にするものです。

私たちが暮らす山陰地方では、冬季をいかに暖かく、かつ光熱費を抑えて過ごせるかが大きな課題です。

住宅の新築設計の際、暖かい家や冬に洗濯を干す場所の確保などのご要望は多く、薪ストーブの導入を検討するクライアントも増加しています。

私たち自身も昨年、自邸である「HOME BASE」に薪ストーブを設置し、薪ストーブライフを楽しんでいます。薪ストーブから見える炎の揺らぎが、より生活の質を豊かにしてくれています。


HOME BASE

と同時に、薪ストーブを導入して長年使い続けるためには、それなりの覚悟が必要であることも、あらためて感じています。

薪ストーブを効率よく稼働させるためには、設置位置はもちろん、外壁や開口部の断熱、薪を乾燥させる薪棚、毎日運び込むための動線など、建築の役割は大変重要です。

そうした建築が果たす役割とは別の部分、つまり、薪ストーブを使う日常 — 経済的な側面(薪を購入すると灯油などより高い)、薪の確保や薪割りなどの関連作業に必要な労力などの、お金に換算しづらい部分 — にこそ、薪ストーブを日々使っていくうえでハードルになりうるものが潜んでいます。

体を動かすこと、家族で協力すること、薪集めにより繋がる人脈など、このような環境を「豊かさ」と捉えることが出来るのか? これが、薪ストーブ導入を成功させる鍵となるのかもしれません。

私たちは、薪ストーブのユーザーとして、建築家としてメリット・デメリットを正確に伝え助言できる立場でありたいと考え、今回、手がけてきた住宅の中で実際に薪ストーブを導入されたクライアントへのインタビューを実施しました。日々、実際に薪ストーブを使っているクライアントの生の声は、薪ストーブ導入をお考え方のお役にきっとたつはずです。

薪ストーブを導入するに当たって考えるべきこと、知るべきこと

薪ストーブを導入するにあたって「ここは聞いてみたい」といった、いわゆる「よくある質問」と、「これは導入する前に知っておくべき」という点を以下にまとめてみました。

  • よくある質問
    1. 1シーズンで薪はどのくらい使うのか
    2. 薪はどのように調達しているか
    3. どんな作業が発生するか
    4. どんな機材が必要になるか
    5. 薪はどこに保存しているか
  • 知っておくべきこと
    1. 薪ストーブにも寿命(耐用年数)があります
    2. ランニングコストを事前に計算してみよう

一つずつ見ていきましょう。

薪ストーブの「よくある質問」

1シーズンで薪はどれくらい使うのか

薪ストーブを導入した8のクライアントにアンケートを実施した結果、平均4.5トン使用するようです。

もちろん、一日中使う家庭もあれば、平日は夜間だけというケースもありますし、ストーブの種類によって消費量も変わってきますので、一概に「これだけ使う」と言えるものではないようです。

ちなみに、上で紹介した4.5トンは、およそ5.6㎥(立方メートル)に相当します。

仮にこれを購入するとなると、1㎥=2.5万円として14万円かかります。灯油に換算すると一斗缶およそ160杯分です。

これを安いと見るか高いと見るかは、部屋の広さなどの状況によって変わってくると思いますが、「ちょっと高いな」と感じる方も多いと思います。

そこで次の質問、「薪はどのように調達しているのか」という質問が生じるわけです。

薪はどのように調達しているか

10人の調達方法をまとめてみました(一人が複数の調達方法を使っているため、合計は10名を超えます)。

  • 自伐(所有している山から収集等)……4名
  • 譲り受ける……3名
  • 購入(森林組合から等)……2名
  • 廃材を利用……1名
  • その他……1名

多いのは、自伐(自分で木材を伐採し、乾燥させて薪にする)。山を所有しているなど、薪ストーブオーナーにしてみれば、理想的な環境をお持ちの方も(ただし、伐採するだけでなく、植林していく必要もありますが)。

譲り受ける、というのも多いですね。トラックが倒木を運んでいると追跡して、廃棄する場合は譲り受ける、というツワモノもいます。

山を持っていて自伐できる、定期的に譲り受けているといった恵まれた環境の人ばかりでなく、例えば河川敷に生えた木を国交相が伐採して一般に提供するなどの情報を得て収集するなど、一定の収集方法ではなく、いつも工夫しながら薪を調達している方も。

薪がなければ、無用の長物となってしまう薪ストーブ。薪の収集・確保は、薪ストーブオーナーにとって最も重要な作業の一つです。

アンケートの「薪ストーブを導入して大変なことは何か?」という質問に対する答えとして、「薪の調達」が一番多いのも頷けます。

どんな作業が発生するか

伐採、運搬、玉切り、薪割り、薪ストーブの掃除・修理など、薪ストーブに関する作業は、全般的に自身で実施しているオーナーが多いようです。

薪ストーブを導入する方は、こうした作業を面倒と感じるのではなく、むしろ楽しみとされている印象ですね。

どんな機材が必要になるか

上記に挙げた薪ストーブ関連作業には、必要な機材、あると便利な機材があります。安価なものから高価なものまで種々様々ですが、長年使うことを考えると、丁寧に選び、しっかり投資するのが良さそうです。

作業名 必要な機材
伐採 チェーンソー、斧
運搬 軽トラ
玉切り チェーンソー
薪割り 薪割り機(油圧式)、斧、クサビ、ハンマー
掃除・修理 薪ストーブ用の掃除道具

薪はどこに保存しているか?

薪の乾燥期間(一般的には1年〜3年)を考えると、2〜3シーズン分の薪が保管できる薪小屋が必要になってきます。

薪の保存方法

薪の量は薪ストーブの種類や使う時間・頻度によって変わってきますが、上記で紹介した平均5㎥で考えると、10〜15㎥の薪小屋が必要になる計算です。

15㎥の薪小屋だと、例えば横幅15メートル、高さ2メートル、奥行き0.5メートルのサイズでつくると、ちょうど15㎥になりますね。

アンケートを見ると、「家の設計段階で薪小屋を組み込むべきだった」という回答も。

また、寒い屋外に頻繁に薪を取りに行くことがないよう、屋内に「薪部屋」をつくってストックしている、という方もいらっしゃいました。

薪ストーブについて「知っておくべきこと」

さて、次に薪ストーブについて、あまり語られることのない、しかし知っておくべきことについてお話ししたいと思います。

薪ストーブにも寿命(耐用年数)があります

よく「薪ストーブは一生モノ」と言われます。

30歳で家を建てて、80歳までそこで暮らせば50年。さて、その間、薪ストーブは確かな一生モノの道具として活躍してくれるでしょうか。

答えはYESでもあり、NOでもあります。

日々、高熱の炎にさらされるという過酷な使用条件が何年、何十年と続けば、小さな故障が生じ、そこから様々な不具合が広がってきて、最終的には使えない状態になってしまう。そんなことが、やはり起きてしまうこともあります。

一般的な耐用年数は15〜20年とされていますが、長く使うには、その他の道具と同じで「定期的に、適切に、丁寧にメンテナンス」し、そして「薪ストーブに負荷のかからない、しっかり乾燥した薪を使う」ということが大切になってきます。

上記で紹介した薪ストーブの掃除や修理は、オーナー自身で実施するのに加えて、プロの目でも定期的にチェックしてもらうことが、長寿の秘訣かも知れません。

ランニングコストを事前に計算してみよう

もう一つの知っておくべきことは、「お金」の話です。

薪ストーブで暖まった部屋で、ゆらめく炎を眺めながらゆったりすと過ごす時間はプライスレスですが、現実問題として「導入費用(イニシャルコスト)」と「運転費用(ランニングコスト)」がかかります。

導入費用はきちんとチェックする方は多いのですが、ではランニングコスト、しかも10年、20年という長期スパンで計算し、チェックする方はどれだけいらっしゃるでしょうか。

以下で、鳥取県の暖房器具としては一般的な石油ストーブと比較してみます。

薪ストーブ 石油ストーブ
本体価格 50万円 2万円
工事費 50万円 0円
機材費(*) 15万円 0円
燃料代(*) 13万円 2.5万円
メンテナンス費 2万円 0円
合計(1年目) 130万円 4.5万円
合計(10年) 265万円 27万円

導入1年目では石油ストーブに対して29倍、10年後でも9倍の費用がかかっています。

この表の中でカットできるのは燃料代ですから、ここを自伐や譲受によってコストダウンできれば、バランスはかなり変わってきますね。

ただ、石油ストーブの10年分の費用は、薪ストーブの本体価格のおよそ半分ですから、やはり薪ストーブにはお金がかかるというのは否定できません

オーナーたちは満足しているのか

では、薪ストーブを実際に自宅に導入し、日々使っている人たちは、満足しているのか、していないのか。

アンケートでは、10人中10人が「薪ストーブを導入して正解だった!」と回答しています。

薪の収集や確保、薪割りなどの肉体労働、お金がかかるといったものを忘れさせてくれるほどの幸せを、薪ストーブは与えてくれるんですね。

以下は薪ストーブのオーナーたちが「ここが良い!」と感じているポイントです。

  • 家全体が暖かくなる
  • 炎に癒される
  • 薪をつくる作業が運動・ストレス解消になる
  • 薪ストーブを通じて、新しい仲間ができる
  • 料理が美味しい、楽しめる
  • 洗濯がよく乾く
  • 災害時に暖がとれるので安心

ただ、関連作業の肉体的負荷を気にして「体力が続いている限り、正解と感じるのかも知れない」と答えたクライアントも。

PLUS CASAのクライアントが愛用している薪ストーブたち

最後に、私たちが設計した住宅に導入した薪ストーブをご紹介します。

コンツーラC650導入した作品:case-Y/H-R

ドブレヴィンテージ50導入した作品:case-My/T

ドブレ640CB導入した作品:case-C/T-R

ダッチウエストFA265導入した作品:case-H/M

アンコール導入した作品:case-K/Acase-S/T-R

イキノックス導入した作品:HOME BASE

ピキャンオーブン導入した作品:case-I/S

プリマス クラシックブラック導入した作品:case-S/A

(一部、写真をメーカーのホームページから印象しました。詳細は文末に掲載しております)

* 一般社団法人 日本暖炉ストーブ協会HP 統計資料
* 機材費:油圧式薪割り機、チェーンソーの購入費用の概算
* 燃料代:薪=5㎥、灯油=162リットル(一斗缶9配分)/月×5か月分、56円/リットルで試算
* 画像出典:コンツーラC650ドブレ640CBダッチウエストFA265アンコールプリマスクラシックブラック