鳥取の自然の中で、大好きな農業と趣味を楽しみながら暮らしたい。そう願うご夫婦のための家です。
リビングを中心に諸室をコの字型に囲む平屋プランは、機能性と居住性を高め、老後の暮らしの助けとなるはずです。
そのリビングには、ご主人の念願だった薪ストーブを設置しました。丸太と小屋組みがあらわになった天井部分には越屋根も設けられ、自然の光ややさしく降り注ぎます。
どこか懐かしさを感じる空間の中で、季節に応じて変化する光と空気に包まれ、豊かな風景を楽しみながら、のんびりと暮していただけたら。
そんな思いを込めて設計しました。
Data
Detail
リビング
まず目に飛び込んでくるの米マジェスティック社製の高機能ストーブ「プリマス」。冬場でもこれ一台で家全体が温かくなる。天井は松の丸太の小屋組み。
デッキテラス
リビングを自然へと接続する、開放的なデッキテラス。デッキの中央あたりまで屋根が伸びており、多少の雨でも利用することができる。
書斎
自著を持つ奥様の執筆活動の場としても使われる書斎。豊かな自然の景色が望める。棚は可動式で、作業に集中したいときなどは、お互いの間に棚を移動することもできる。
トイレ・洗面所・風呂
「木の家が建てたかった」というAさんの言葉どおり、あらゆるものが木でできている。洗面所、トイレの床も例外ではない。
足洗場
農業を楽しむA夫妻が重宝する足洗場。扉を開けると、洗面所、浴室、クローゼットと続いており、動線も考えられている。
越屋根
屋根に設置された越屋根はリビングの天井部分と直接繋がっており、日中は豊かな光がリビングを満たす。
平面図
- Ba 浴室
- Bh 脱衣所
- BR 寝室
- C クローゼット
- D 書斎
- E 玄関
- JR 和室
- K 厨房
- L リビング
- S 収納
- T テラス
- WPo 足洗場
- WPi 洗面所
特別記事: 自然に寄り添う家。
定年を機に、鳥取市街地から実家のある佐治町に戻ってきた施主のAさんご夫妻。A邸は、ここで人生を全うするための「終の棲家」として建てられた。
平屋建ての、こじんまりとした印象のA邸。薪ストーブのあるリビングを取り囲むように、キッチンや寝室、書斎、デッキテラスなどが配置されている。決して部屋数は多くないが、本当に必要なものだけが置かれ、そしてすべての部屋から、美しい自然を窓外に楽しむことができる。
実家の果樹園を手伝いながら、自分たちの畑も持ち、毎日が忙しいAさんご夫妻。農作業から帰ると、勝手口に設けられた足洗場で、衣類や靴についた汚れを落とす。戸を開けると脱衣所になっていて、洗面所、風呂、クローゼットと続く。「農業」というキーワードから考えられたレイアウトは、ストレスのない動線を生みだす。
「最初に提案されたプラン、ほぼそのままです」
ここにこういう部屋をつくってください、という具体的な依頼はなかった。建築家と話をしていく中で、語られたキーワードが、具体的な間取りや機能となってA邸に与えられ、それが住みやすさを生んでいる。
「自給自足の生活が夢です」と語るAさん。完全な自給自足の実行は、現代では難しいが、自分たちと自然との関係をしっかり認識することから、その生活はスタートする。
窓から見える山々が、若い緑から深い緑へと変化し、赤く燃え、雪を被って真っ白になる。当たり前かも知れない四季の景色は、しかし、人は自然と繋がっている、というよりも、自然そのものであることを静かに教えてくれる。
自分たちでつくった野菜や果物を楽しみながら、抜けていく風をデッキテラスで感じる夏。紅く染まる木々を眺めながら、書斎で執筆活動に勤しむ秋。冬は、薪ストーブが炎を揺らす。春が来て、畑仕事が忙しくなったAさんたちは、足洗場で汚れを落とし、心地よい疲れを感じながら、新しい生命が息吹始めたことを、自然に感謝する。
自然に寄り添いながら、時を刻むことのできるこの家は、Aさん夫妻にとって、正に理想的な終の棲家となるだろう。
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実際に薪ストーブを導入しているクライアントへのインタビューを実施。メリット・デメリットを語り尽くします。薪ストーブの話はこちら。