敷地は鳥取市内の開発分譲地に位置します。幹線道からほんの少し入り込むだけですが、ずいぶんと静かで落ち着いた雰囲気を感じられる場所でした。
敷地の南側と西側に隣接するアパートとの関係性や、クライアントの求めた外に繋がるリビング、太陽光発電の使用等の条件をもとに、プランや形態のスタディを繰り返しました。どちらに位置するのか最後まで悩んだ結果、1階と2階の両方に位置することで解決したデッキテラスが、この住宅を特徴づけてくれました。
上下で一体になった外部空間は、近隣からの視線は遮りながらも、空への開放感と、豊かな自然の光や風を内部に取り入れてくれます。外部でも上下階の動線を繋ぐことで生まれた高い回遊性が、ここでの暮しをより楽しいものにしてくれることでしょう。
Data
Detail
リビング
ダイニング、キッチンと一体となったリビングはS邸の中心部。和室とつながっており、またデッキテラスに面しているため、高い開放感を感じることができる。
デッキテラス
1階のデッキテラス。奥に見える階段が、2階のデッキテラスを繋ぐ。デッキテラスは壁に覆われておりプライバシーを確保するが、不思議と閉塞感はない。
2階デッキテラス(からの眺め)
近くに久松山へと連なる山々を眺めることができる、2階のデッキテラス。写真右側に一する階段で1階デッキテラスに降りることができる。
平面図
- Ba 浴室
- BR 寝室
- C クローゼット
- CR 子ども部屋
- E 玄関
- D ダイニング
- Fs フリースペース
- JR 和室
- K キッチン
- デッキテラス
特別記事: ぐるぐる、繋がる家。
Sさんの長男、いっくんが軽快に外階段を上がっていく。僕たちがその後ろを追って二階のデッキテラスに上がると、もう姿がない。緑豊かな景色を眺めていると、下から笑い声が聞こえてきた。見下ろせば、建物内部の階段から降りたいっくんが、一階のデッキテラスからこちらを見上げて笑っていた。
S邸の玄関を入りホールを抜けると、キッチンとデッキテラスが一体となった、かなり広く感じられるリビングに出る。デッキテラスには階段があって、二階に上がると一階のそれよりも広いデッキテラスに繋がっている。窓を開けて二階に入り、階段を下りるとリビングへと戻ってくる。一階、二階がそれぞれデッキテラスと繋がっていて、内と外、二つの階段がそれらを結びつけている。
子どもはもちろん、大人の僕でも走って廻ってみたくなる、回遊性の高いこのプランが生まれる前、PLUS CASAの小林たちは別のプランをSさん夫婦に見せている。予算、その他の諸条件、プレゼンの期日。もろもろをクリアしたはずのプランは、しかしSさん曰く「どこかPLUS CASAらしさがなかった」。そして、それを一番感じていたのは小林たちだった。
「ごめんなさい。やはりこのプランでは、わたしたちにご依頼いただいた意味がない。お待たせしてしまうけれど、もう一度考えさせてほしい」
その後に提示されたのが、現在のプランだった。
「新しいプランは、最初とは全く違うものになっていました。正直、最初のプランを見た時、不満を感じなかったわけではなかったんですが、言いづらいじゃないですか、そういうの。でも、小林さんたちが自分からそうおっしゃってくださったので。ますます小林さんたちに頼んで良かったなと思うようになりました」
最初のプランがどのようなものだったか、僕は知らない。ただ、楽しそうに走り廻るいっくんや、彼を幸せそうに見守るSさんたちを見ていると、最初に提示されたプランに欠けていた何かが、今のS邸にしっかりあることは分かるのだ。
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