婚約を交わした二人から、結婚後に暮らす家をと相談を受けました。敷地は智頭町の土地無償譲渡制度を利用し、地元に留まることができました。
計画は、まだ始まっていない二人の生活、これから産まれる子供、将来同居予定のお母さん、法事、祭事など多様なシーンのシミュレーションからスタート。ワンルーム、個室、つづき間など、間仕切りを変動すれば間取りを変えられる、日本家屋の伝統様式「田の字」プランをリビング廻りに採用し、トップライトや借景などで居住性を高めました。冬場の洗濯干場、来客用コート掛け、趣味のダーツ練習場所など細かい要望について打合せを重ね、機能を加えていきました。
昨年赤ちゃんが産まれ、二人だけの時とは違う空間の用い方になっていると聞きます。今後もライフスタイルとともに、空間の使い方も柔軟に変動していくことだと思います。
Data
Detail
1階
出産や、法事/祭事などの行事、親との同居など、ライフスタイルの変化にも対応できるよう、伝統的な日本家屋に見られる田の字プランを採用。
LDK
大きな吹き抜けを持つ開放感のあるLDK。リビングルームと和室の間仕切りに衣類をかけられる可動レールがあるなど、細部まで機能が与えられている。
ホシ姫サマ(リビングルーム)
リビングルームには、奥様の念願だった「ホシ姫サマ」が設置された。冬の暖まった空気を有効活用するためにT邸に加えられた工夫の一つだ。
リビングルーム
リビングルームに設置された収納はテレビ台、神棚のほか、趣味のダーツ練習ボードを兼ねる。
寝室
大きな窓からたっぷりと光が差し込む寝室。右上の窓はリビングの吹き付けと接続している。
駐車場
ビルトインガレージで、雨雪の日も濡れずに出入りできる。洗面所や脱衣所とにも直接アクセスできる。
平面図
- Ba 浴室
- BR 寝室
- C 収納
- E 玄関
- JR 和室
- LDK リビング・ダイニング・キッチン
- P 駐車場
- V 吹き抜け
特別記事:間取りよく、動を制す。
結婚後、二人の共通の地元である山間の町に建てられたTさん夫妻の家。もともと雨天、曇天の多い鳥取県。山間部ともなれば冬は積雪量も多く、寒い。Tさんはその町での「日々の生活が快適に送れる家を」とPLUS CASAに設計を依頼した。
Tさんが「よく最後まで付き合ってくれた」と振り返るほど、設計には何度も検討と変更、修正が加えられ、現場では細かなところまで確認が繰り返された。この過程でTさんは「家事動線の重要性に気づかされた」と述べているが、図面を一見するだけで、いくつかの工夫に気づくことができる。
例えば、トイレや浴室、脱衣所、そしてキッチンなどの水周り。ここに駐車場から直接アクセスできる動線は、着衣が濡れていたり、急を要する場面だけでなく、土の着いた採れたての野菜を持って入るといった地方都市ならではの風景で生きてくる。また、全ての水周りが一か所に集中するレイアウトも、家事の効率性を高めてくれるはずだ。
「空気の動線」にも注目してみよう。奥様の希望でリビングルームに設置されたという室内物干しは、冬季において、生活の中心となる空間の暖まった空気を有効活用するためのものだが、このリビングの吹き抜け上部に空いた窓は夫婦の寝室にも繋がっている。暖かい空気は寝室へと流れ込み、就寝時には、快適な就寝環境を作り上げてくれる。暖かい空気をしっかり活用する考えは、雪の多い地域の知恵と言えるだろう。
実際に暮らす前に日常の細部まで想像して、具体的に計画に落とし込む作業は難しいものだが、それをやり抜けば、日々の家事や雑事のストレスを最小限に抑え、いやむしろ、生活の一部として楽しむことができる家が手に入るのだ。
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