WORKS – case-C/Y

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敷地面積12坪という厳しいな条件下で、施主唯一の要望は「プライバシーを確保しつつ、光と風を最大限に取り込める家にしたい」というものでした。

わたしたちは、北側前面に道路、南側に田園風景というロケーションを活かし、階段などの共用部分を北面に、リビングや多目的室を南側に配置して上下に積み重ねるシンプルな構成を採用。限られた面積、空間を最大限に、多目的に利用できるような構成と配分に多くの時間を費やしました。

The casa for Mr.Y’sとして導き出された答えは、一般的な「家」とはかけ離れたものかも知れません。しかしこれは、この場所でこそ実現した、住まい手独自の価値観から生まれた、唯一無二の「家」であると考えています。

Data

Data:  ○所在地/鳥取県智頭町○用途/専用住宅○家族構成/夫婦+子ども3人○構造/在来木造(県産材)○規模/地上3階+ペントハウス○設計期間/2001年 6月~2002年5月○施行期間/2002年6月~2002年12月○敷地面積/49.81m2○延べ床面積/85.05m2

Detail

鳥取の建築家PLUS CASA WORKS - case-C/Y

屋上

注意深く天候に気を留めるなら、1年365日の中で外で快適に過ごせる日が意外に多いことに気付くはずです。そのことを踏まえ、外部空間を、プライバシーが確保された「もう一つのリビング」として成立させることができれば、住宅の持つ可能性はぐんと高まります。この可能性は狭小な土地に立つ住宅でも、屋上という場に秘められています。

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子ども室

誰がここに一番長く住むのか? この点について考えた結果、いずれ自立し親離れしていく子どもたちの為にそれぞれの個室はつくらず、あらゆる生活の変化に対応できる単純な一室空間が生まれました。この非常にフレキシブルな空間は、子どもたちが自主的にルールを定め、お互いの領域やプライバシーを大切にすることを学ぶ助けとなります。

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大開口

実際の広さ以上の空間の大きさを感じてもらうことを意図し、窓をできる限り大きくしました。一般的に窓が大きいと「夏暑く、冬寒い」と思われていますが、日本の緯度において南面は例外となります。真夏は南中高度が高いため日射率が低く、冬はその逆で日射率が高くなるためです。天候や四季の移ろいを室内にいながらに感じることができます。

鳥取の建築家PLUS CASA WORKS - case-C/Y

バスルーム

1日の疲れを癒す空間がバスルームです。「お風呂が大好き」という人はとても多いにも関わらず、現在の一般的な住宅はバスルームに重きを置かれていないように見えます。限られた面積でもゆったりとでき「休日は日差しを浴びながら、1日中でも入っていたい」そう思えるようなくつろぎの空間としてのバスルームが、Y邸に誕生しました。

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キッチン

調理が、家事労働と考えられている理由のひとつとして、家族の団欒から外れた場所で作業することを強いられるから、というものがあります。家族と顔を合わせ、団欒の中にいながらにして料理を作ることを可能にするキッチンは、より多くの設備を備えた孤独なキッチンよりも機能的と言えないでしょうか?

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吹き抜け

吹き抜けは、別のフロアを空間的に接続するだけでなく、そこに暮らす人間の精神的なつながりを強める働きを持っています。Y邸では、2階のリビングルームに光とゆとりを与えつつ、そこにいる両親と3階の子ども室にいる子どもたちが、常にお互いの気配を感じながら、関わり合いながら、「家族」として生活していくことを可能にします。

平面図

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特別記事: 施主 Y氏に聞く

「どうしても家を建てたい、と思っていた訳ではないです、実は」

と、施主の横田譲さん。このちょっと風変わりな家(失礼)の施主から聞かれるであろう言葉を、ある程度想像していた僕たちには、少し意外な言葉だった。

「興味が全然ない訳でもなかったんだけどね。大手の住宅メーカーの展示場とか、モデルルームとかには、何となく行ってたし。でも、良くはないんだよね、決して悪くもないんだけど。正直、これを建てても自慢にはならないなと思った。僕は格好つけたがりなところがあって(笑)」

当時横田さんは、地元の智頭町を離れ、鳥取市内に暮らしていたが、自分の仕事関係の展望や、娘の進学などで、地元に戻ろうかと考えていた。

「ちょうどその時期に、僕の幼馴染みで親友の和生が、京都から戻って来たんです。で、今まで彼が手掛けた住宅なんかの本や写真を見せてもらって。それで、ああ、和生に俺の家を設計してもらおう、和生の設計した家に住もう、と。純粋にそう思いましたね」

和生、とは、建築家の小林和生さんのこと。京都の超有名アトリエでキャリアを積んで帰郷していた小林さんだが、横田さんから住宅の設計依頼を受けた時期は、自分が学び築いてきた建築のスタイルを反映させる仕事がなく、フラストレーションがたまっていた時期でもあった。横田さんからの依頼を受け、早速設計に取りかかる。敷地面積12坪に夫婦+子供3人。かなり厳しい条件だが、03年2月、横田邸は完成した。

「僕らは建築については素人。もちろん自分たちが暮らす家だから、いくつかの要望は伝えたけれど、基本的に、この家のことは全部和生に任せました。でもやはり、意見の相違ゼロ、ということはなかったですね」

「例えば吹き抜けなんですが、小さな子供もいるし、僕は安全面を考えてガラス張りにしてほしいと伝えたんです。でも、なぜこの家に吹き抜けを設けるか、彼がその理由をきちんと説明してくれたんですね」

「和生が考えるコンセプトのひとつに、『家族を感じられる家』というのがあります。この吹き抜けは、そのコンセプトの表れの一つ。違うフロアにいても、お互いを感じることが出来るようにです。実際に暮らし始めて、それが良く実感出来ますよ。2階からおーいと呼べば、3階からはーいと返ってきますしね(笑)」

「逆に小さな家だから、子供が勉強を始めたりしたら、テレビの音を抑えたりなどの気配りも必要です。でもこれって当たり前の事なんですよね。そうしてお互いがお互いに配慮したり、気遣いを示す大切さを、この家では、家族生活の中で学べるんです。和生の設計には、そうした『暮らし』についての考えが随所に反映されていると思います」

「妻も、この家に暮らし始めてから、意識ある生活ができるようになったと言っています。キレイな家で、自分もいつまでもキレイな女性でいたいと。そこに暮らす家族や、生活そのものを高めてくれる家ですよ。ホントに満足しています」

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