case-C/T-OFFICE

鳥取の建築家PLUS CASA case-C/T-OFFICE

真っ黒なタイルで囲まれたエントランスに立ち自動ドアが開く。中に入ると淡いクリーム色と間接照明の重厚な階段。見上げるとその先には、対照的な豊かな自然が視野に入ります。

クライアントは建設業経営者。「社員やこれから入ってくれる新入社員が、この建築で働けることに喜びを感じられるよう、また慌ただしい日常の中で非日常を楽しめるプライベートスペースも欲しい」というご要望から始まった計画。職場環境の改善と次世代の繁栄を見据えた社会理念を表現したいと設計しました。

東西に長いボリュームと間仕切りの無いワンフロアオフィス+デッキテラス。冬は南側から日差しが入り暖かく、夏の日差しは庇が遮り、光熱費の節約にも一役かっています。

オフィス空間と対照的に2階プライベートスペースは安堵感を感じるようボリュームは抑え、デッキテラスも壁で被われ、外部からの視線を気にすることなく、ご要望通りゆっくりと過ごすことが出来ます。

この新しいオフィスで、会社が益々発展していくことを楽しみにしています。

Data

○所在地/智頭町○用途/事務所○構造/在来木造○規模/地上2階建て○設計期間/2013年5月~2014年8月○施工期間/2014年8月~2015年1月○敷地面積/950m²○延床面積/286.51m²○設計/(株)PLUS CASA○施工/(有)瀬戸商店

Detail

鳥取の建築家PLUS CASA case-C/T-OFFICE

ファサード

白と黒のモノトーンが印象的な外観。黒い部分は「朝日放送(大阪)のファサードをイメージした」という細かな格子状になっている。やや不規則に並んだルーバーが、採光を確保し、外からの視線を遮る役目も果たす。

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エントランス

エントランスを入ると、ライトアップされた階段が待ち受ける。「チャペルでの結婚式みたいでしょ」とは施主の弁だが、確かに、来客がワクワクするような仕掛けだ。一階の床はこの階段分高く、下は書庫になっている。

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木製の建具

エントランスの階段を上がると、20メートル以上の長さの廊下と、デッキテラスが目に入る。両者を隔てる床から天井まで続く大きな掃き出し窓と連なる建具が壮観。建具は黒く塗られて金属のように見えるが木製だ。

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デッキテラス

約50平米もある大きなデッキテラス。大きな窓からは智頭町の豊かな自然と、そこを時折り横切るJRスーパーはくとを望むことができる。南側に面しているため、隣接するオフィスにたっぷりと光を取り込んでくれる。

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オフィス

1階の大部分を占めるオフィス。T-OFFICEの意匠としてよく現れる市松模様は、主に収納部分で使われている。写真左側はデッキテラスと繋がっているので、非常に明るく、また開放感にあふれている。

鳥取の建築家PLUS CASA case-C/T-OFFICE

社長室

現在は、奥の壁には企業シンボルマークが掲げられ、大きなデスクが置かれている。壁面には後輩がプレゼントしてくれたというジョージ・ネルソンの壁掛け時計。ガラスブロックから太陽光が溢れる。

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ゲストルーム

2階は20畳もある、広々としたゲストルーム。大型テレビやプロジェクター、ソファ、寝室や浴室もあり、ここで生活することも可能だ。琉球畳のように見える床は、畳のように見えるカーペット。

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浴室

2階のゲストルーム用のバスルーム。浴槽内には段差があり、腰をかけて半身浴をしながらテレビを見ることができる。窓を開けば、隣接するデッキテラスにて、開放的な入浴が楽しめる。

平面図

鳥取の建築家PLUS CASA case-C/T-OFFICE

鳥取の建築家PLUS CASA case-C/T-OFFICE

  • Ba_浴室
  • BR1_社員用仮眠室
  • BR2_来客用寝室
  • D_デッキテラス
  • E_玄関
  • GR_ゲストルーム
  • O_事務所
  • PR_社長室

特別記事:「凄い!」オフィスが智頭にあります。

国道373号線を車で走っている時、智頭中学校を過ぎたあたりで、川向こうにある白と黒の建物を見て、「あれは何の建物だろう?」と疑問に思った人は多いだろう。

「あれはカフェですか? と役場に問い合わせた人もいたそうです」と話すTさんは、橋や道路などをつくる建設業の社長で、実はこの建物はそのオフィスなのだ。

「一見、建設業ぽくない、かっこいい社屋にしたかったんですよ。なぜかって? この山奥でしょう。ここにプレハブの事務所を建てて、新卒の方に入社してくださいって言ってもなかなか来てくれませんよ。でも、小林くん(PLUS CASA)にこれを設計してもらってからは、大学生の方から門を叩いてくれるようになったんですよ」

確かに、山間部にある智頭町の建設業と聞けば、もっと素朴で無骨なビルをイメージするかも知れない。山と川、あとは昔ながらの民家がちらほら見える、そんな景色の中にまるで「龍が天に昇る」ようなかたちの、白と黒のモノトーンの建物があれば、建設業への求職者でなくとも、誰だって気になるはずだ。

エントランスを入ると、何かのセレモニー会場かと見紛う、ライトアップされた階段。それを上がると正面に幅20メートル以上の大開口、広大なウッドデッキ、その向こうには豊かな智頭の自然。白、黒、赤など、様々な色で構成される市松模様が意匠に用いられた屋内は、モダンな雰囲気で、周辺の景色との強いコントラストを示す。初めての来客者は驚きの連続で、エントランスから社長室に入って腰を下ろすまでに「6回は凄いですね!と言いますね(笑)」とTさん。

もしかすると、この社屋には、そうしたビジネス的演出の意図があったのかも知れない。しかし、そうではない、別の意図、考えがあったのではないか。社屋を案内してもいながら、豪快だがとても柔らかな物腰で繊細な気遣いをするTさんの話を聞き、ふと、そう感じたのだ。

地域の過疎、人口減少問題、建設業の労働力不足など、日本全体、智頭町、建設業界に様々な問題がある中で、智頭町にいかにして注目を集めるか、労働力となる若い世代にいかにして来てもらうか。労働環境や労働条件を改善し、いかに気持ちよく、いかに長く働いてもらえるか。

こうした難しい問題に対するTさんのアプローチが、この社屋だったのではないか。「僕らの時代みたいに仕事ばかりじゃダメだ。しっかり休み、遊ばないと」という言葉や、シャワーが完備された清潔な仮眠室、デスクワーク可能なウッドデッキなど、社員の快適な就労環境に配慮された社屋を見ていると、そう確信するのだ。

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鳥取の建築家 PLUS CASA - MAGAZINE PLUS CASA 13

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