敷地は北面接道の住宅地、既に南面と東面はふさがれ、西面もいずれそうなることは予想できました。クライアントの要望は大きく分けて(1)一つの部屋で家族みんなが暮らしたい(2)友だちを呼んでBBQをするので、リビングからつながるデッキスペースが欲しい(3)雨や雪を考慮して屋根付きの駐車スペースが欲しい、の3つでした。
この与件から2階を生活の中心となる場としてデッキ、リビング、バスルーム、クローゼットを配し、1階には寝室と駐車スペースを割り当てました。デッキとリビングを仕切る木製家具は、全開放となって内と外の境界を曖昧にして空間を一つに繋ぎ、閉ざされつつも開放的な暮らしが可能です。
大きく張り出した駐車スペースの庇は、この住宅の顔とも言えるアクセントとなりました。
Data
Detail
リビング・ダイニング
キッチンから見たリビング・ダイニング。外部との視覚的な繋がりが、広さと開放感を与える。
デッキテラス
A邸の中心部であるリビングと接続されたデッキテラスは、夏はBBQ、冬は雪遊びと、アウトドアアクティビティの場ともなる。
駐車場
夕闇に浮かび上がるA邸の駐車場。木目が美しい。特徴的な大きな庇は、雨や雪の日でも、車の乗り降りを楽にしてくれる。
収納
玄関脇に設置された巨大な下駄箱と収納棚。
平面図
- Ba 浴室
- BR 寝室
- C 収納
- De 書斎
- E 玄関
- K キッチン
- L リビング
- P 駐車場
特別記事: 「これが、わたしたちのための家」
いつか自分たちの家は欲しいと思っていたが、時期などを明確に決めていたわけではなく、何となく情報だけを収集していたAさん夫婦。地元の情報誌に掲載されていたPLUS CASAの住宅(case-F/T)を見て「あ、コレだ!」と直感したという。仕事柄、Aさんはこれまでにたくさんの住宅を見てきたが、「鳥取でもこんな家が建てられるんだ」と嬉しくなったそうだ。
設計を進めるうえでAさんが提示した条件は「屋根のあるガレージ」「デッキテラス」「ワンルーム的な暮らし」の3つ。それらはすべて実現し「想像していた以上」の家となった。欲しいと思っていたもの、打ち合わせ中にふと思いついて口にしたものが設計に組み込まれ、それが本当の家となって建ち上がっていく様子を、しかしAさん夫婦は「寂しい」と感じていた。それだけ家をつくる過程が楽しかったのだという。
が、居を移してすぐにその寂しさは消える。あまりにもそこでの暮らしが素晴らしかったからだ。
リビング横に設置されたデッキテラスでは、ひとりBBQ、プール遊び、雪遊びを楽しんだ。布団や洗濯物もたくさん干せるし、リビングにたくさんの光と風を取り込んでくれる。リビングからも風呂からも、このデッキテラスを通して星空を眺めることができる。
楽しい空間は、家族をよりオープンにした。家にいる時間が以前よりも長くはなったが、社交的な時間を過ごすことはむしろ増えたという。
本当に嬉しそうに自邸について語るAさん夫婦。
「この家はね、自分たちのためだけの家なんです。もう自分たちの体の一部のような気がしています」
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