ご主人はかつて経験された海外での開放的な暮らしを、奥さまはお仕事のための防音室を、それぞれ希望されました。
周囲に豊かな緑を持つロケーションの中、私たちは「景色を楽しむ家」を提案しました。
2階に配したリビングの開口部は、すべて開放できる掃き出しの木製サッシとし、一般的なものよりも30cm高くすることで、生活の中に景色が溶け込むよう演出しました。さらに、まわりを囲む半屋外空間のデッキテラスは、内部空間に広がりを与えるとともに、自然をより感じられる場所でもあります。
いつでも自然を感じ、季節の変化を楽しめるこの景色が、ここで過ごす家族の時間をより豊かに彩ってくれることでしょう。
Data
Detail
デッキテラス
二方向の窓を開け放ち、まるで外にいるような感覚になるI邸のリビング。すぐ近くの山から木の葉の擦れる音が聞こえてくる。
デッキテラス
キッチンから見たリビング。前方二方向に壁がないため、部屋がどこまでも続いているような感覚になる。
デッキテラス
東側に設けられたデッキテラス。夏はここでIさんの息子さんがプールで水遊びを楽しむそう。まるで森の中のプールだ。
クローゼット
IKEAの引き出しが組み込まれた2階のクローゼット。PLUS CASAお得意の大工仕事だ。
玄関内側の棚
玄関の郵便受けに続く棚。こうした小さな所にも施主のこだわりが感じられる。
平面図
- Ba 風呂
- BR ベッドルーム
- CL クローゼット
- E 玄関
- LDK リビング・ダイニング・キッチン
- SR 防音室
特別記事: 「家づくり」、書き下ろし。
午前中の冷たい雨で、より色を濃くした緑が、窓の向こうに見える。ダイニングテーブルに相対して座ったIさんは、その景色をぼうっと眺めていた僕に、ある資料を見せてくれた。
それはプラスカーサの小林が、最初に提案した計画書から、今僕たちがいるこの家、つまり最終形のものまで、平面図から立面図、果ては配電図までを時系列に整理して、一冊の本にまとめたものだった。
Iさんが土地を手に入れたのは08年の秋。それからいくつかの工務店を訪ね設計を依頼したが、これと思うような案は提示されなかった。ある程度、具体的に示したはずの条件が、期待とは異なるかたちとなって提案されることが続き、Iさんは「家づくりは大変だ」と感じるようになった。
そのこともあってか、その後間もなくIさん夫婦はプラスカーサのオープンハウスを訪れるが「すぐに家を建てる予定はない」とアンケートにウソを書いて帰宅。しかし、二人はその日のうちに再びオープンハウスを訪れ、その場で、小林に設計を依頼する。
「理由は何だったんですか?」
この急転直下の顛末を聞いて誰もが抱くであろう疑問を、温かいお茶をいただきながら尋ねてみた。
「見させていただいた家と、小林さんたちの雰囲気ですかね」
大きな決断のきっかけとは、案外そんなものかも知れない。
「また、うまく伝わらなかったらどうしよう、と不安にはならなかったのですか?」
家を立てるという作業に伴うコミュニケーションに疲れ気味だったはずのIさんだが、小林の提示した最初の計画案には大きな可能性を感じ、期待を募らせたという。
「正直、不安がなかったわけではありませんが、はじめてのヒヤリングの時、この人たちなら分かってくれると、直感的に感じたんです」
その後の、家が実際に建ち上がるまでのやりとりが、Iさん夫婦にとって楽しくワクワクするものだったか、ただ大変なものだったかは、Iさんの手によって書き下ろされ、時々開いては当時を思い出して楽しんでいるという、あの本が物語っている。
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プレゼンから引き渡しまで、この作品に関する悲喜こもごものストーリーはこちらでお読みいただけます。