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鳥取の建築家PLUS CASA case-I/I

自分たちが本当に美味しいと思うものを届けたい。という理念で丁寧に作られたケーキやパンが人気の洋菓子店を経営されているクライアント。

「毎日仕事に追われ家族や子供たちとの時間が、つい後回しになってしまう。豊かさを提供する仕事なのに、自分たちの暮らしが豊かではないのでは…」という葛藤を軽減させる住空間づくりのご依頼。私たちの現状ともシンクロし感情移入することも多々ありました。

1階店舗2階屋根裏倉庫だった既存建築を、1階店舗2階住空間の職住一体建築へと増改築を施しました。大きな片流れの屋根裏倉庫空間の天井高が低い部分は寝室、高い部分はリビングとし、一部を店舗と吹抜けで繋げ、仕事中も子供達が安心して過ごせる空間となりました。また開店時から不便に思われていた店舗内の環境や作業動線も同時に改修し、以前にも増して丁寧で拘りあるお菓子などが作られています。

建築が全てのことを解決できるとは思いません。しかしクライアントの想いに、この空間が少しでも役に立てると信じています。

Data

○所在地/岩美町○用途/店舗+住宅○家族構成/夫婦+子供3人○構造/在来木造○規模/地上2階建て○設計期間/2013年5月~2014年9月○施工期間/2014年10月~2015年6月○敷地面積/372m²○延床面積/219.46m²

Detail

鳥取の建築家PLUS CASA case-I/I

リビング

2Fのリビング。奥の壁の向こうは吹き抜けになっていて、店舗と繋がっている。営業中は店舗にいながらにして、リビングにいる家族の気配を感じることができる。

鳥取の建築家PLUS CASA case-I/I

寝室

寝室。将来は仕切りを加えて、子どもたちの個室として利用できる。引き戸を開けると天井の低い物置があり、子どもたちがパーソナルな空間として利用している。

鳥取の建築家PLUS CASA case-I/I

書斎

スクラップブッキングのインストラクターでもある奥様の書斎。近くには使い勝手の良いランドリールームもあり、このあたりは奥様のテリトリーとなっている。

鳥取の建築家PLUS CASA case-I/I

店舗

(写真右とあわせて)(写真下とあわせて)Iさんがつくりあげる作品が丁寧にディスプレイされている店内。リニューアルし空間に余裕の生まれた店舗奥は、イートインコーナーとして解放されることもある。店舗の什器デザイン制作もPLUSCASAが担当した。

鳥取の建築家PLUS CASA case-I/I

平面図

鳥取の建築家PLUS CASA case-I/I

鳥取の建築家PLUS CASA case-I/I

  • Ba_浴室
  • BR_寝室
  • C_収納
  • De1_書斎(夫)
  • De2_書斎(妻)
  • L_リビング
  • E_玄関
  • K_キッチン(厨房)
  • Lp_洗濯物干し場
  • Sh_店舗
  • V_吹き抜け

特別記事:くっついた家。

鳥取砂丘から東へクルマで10分ほど。大阪や東京、北海道などの洋菓子店を渡り歩いて腕を磨いたIさんのお店は、田園風景が広がる住宅地の一角にある。原料や製法にこだわった洋菓子や薪窯で焼いたパンは、開店後、時をおかずして評判を呼ぶ。経営は順調なように見えたが、実はIさん一家には大きな悩みがあった。

店舗を建てる際、当初は住居も併設する予定だったが、予算の関係で断念し、店舗機能だけに絞ることになった。お店がオープンすると同時に、菓子の製造、窯の炎の管理、新製品の開発など、多忙を極めたIさんは、お店に泊まり込むようになる。家族と過ごせるのは食事の時くらいになってしまったIさんは、「人を笑顔にする仕事をしているはずの自分が、家族と笑顔でいられない生活を送るのはおかしなことではないか」と考えるようになった。加えて、最初に建てた店舗には至るところに工事由来の不備があり、特にそれが集中していた厨房に入ると、「よし! やるぞ!」となるべき場所にいるにも関わらず、むしろやる気が失せていたという。

そんな問題だらけの状態を解消したいという思いがピークに達した頃、PLUSCASAの小林が、Iさんのお店を一客として訪れる。その後、SNSを通じてのやりとりが始まった。当初は店内の改装の相談だけだったが、先述のような悩みの相談を受け、最終的には住宅部分を増改築するかたちで、Iさんたちの全ての悩みを解消する方向へと話が進むことになった。

ところで、最初の店づくりでつまづいたIさん、不安はなかったのだろうか? Iさんは、「なかったです。むしろ、こんなに丁寧に話を聞いてくれるのか。こんなに何度も現場で説明してくれるのかと驚きました」と話す。
不安もなく、余計な心配をしなくてすむぶん、自分たちの理想の家づくりに集中できたという。

当初、「広告で見るような広い家」を考えたが、幸か不幸か、予算が足りなかった。「でも、それが結果として、僕たちに本当に必要なものって何だろうと考えるきっかけになったんです」。

既存の店舗に追加された住居部分はコンパクトで、機能も必要最小限だ。例えば、住居部には台所がない。家族の食事は、閉店後の厨房を使う。「これで十分なんです」とIさんは言う。「僕たちは、様々な場所で暮らしてきました。子どもたちにも好きなように人生を歩んでもらいたい。自分たちだけでは背負いきれないような大きな家を建ててしまい、いつか彼らの足枷になってしまうような家を建ててはいけないと思ったんです」

閉店後、みんなで食事をとり、2階のリビングへと上がる。そこで、子どもたちは宿題をしたりピアノをひいたりし、Iさんたちは子どもたちに寄り添って、触れ合って、夜のひとときを過ごす。おしゃべりが楽しくて、一週間、テレビを見ないこともある。家族との時間が十分にとれなかった辛い時期があったからこそ、Iさんたちはいま、本当に大切なものを大切にできるのかも知れない。

両親の愛情に触れながら、そして仕事にも情熱を注ぐ彼らの姿を間近で見ながら育つ、Iさんの子どもたち。たくさんのものを受け取り、学びながら成長するんだろうな、そしてきっと、この家が大好きになるんだろうな。

そう思いながら、I邸をあとにした。

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鳥取の建築家 PLUS CASA - MAGAZINE PLUS CASA 15

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