「ヒトとネコとの快適な共存」がテーマの家です。
クライアントが代弁するネコたちの要望をもとにキャットウォーク、キャットタワー、ネコ階段、ネコトンネル、キャットドアといったネコスケールの動線を、ヒトとのほどよい距離を保たせながら、家全体に張り巡らせました。その一部は、本棚や壁掛け収納であったりと、ひとつのアイテムをヒトとネコが異なる使い方で共用するという試みを取り入れています。
また戸締まりをしていても通風できる夏季の風道、冬季は輻射熱や対流熱を利用して家全体を均一に暖められる電気蓄熱床下暖房の採用など、ネコの留守番環境にも十分に配慮しました。場所ごとに異なる両者の快適さをそれぞれのスケールで追求したこの住宅は、クライアントからネコたちへの愛情に満ちあふれた、実に豊かな空間に仕上がりました。
Data
Detail
リビング・ダイニング
N邸の中心部となるリビングは大きな吹き抜け空間。中央部にキャットタワー、部屋をぐるりと囲むようにキャットウォークが設置されている。
リビング・ダイニング
大きな開口部は、キャットウォークを挟んで、ヒト用とネコ用の窓が上下に分かれている。広い縁側もあり、ヒトもネコも寛げる場となっている。
ネコトンネル
クローゼットに設置されたネコトンネルの内側から、リビングを見る。N邸には同様のネコトンネルがなんと13か所も設置されている。
書棚(ネコと共用
書棚にはところどころに切り込みが入っており、ネコが遊べるようになっている。
収納箱(ネコと共用)
壁に設置された収納箱は、ネコの遊び場にもなるよう計算されたレイアウト。
ネコ階段
ネコ階段を駆け下りるネコ。N邸では一日じゅう、ネコたちの遊ぶ音がする。
平面図
- Ba 浴室
- BR 寝室
- C 収納
- De 書斎
- E 玄関
- JR 和室
- K キッチン
- L リビング
- T デッキテラス
- V 吹き抜け
特別記事: ネコと風が駆け抜ける家。
玄関を開けると、風がふわーっと顔を撫でた。トントントンと小さな足音も聞こえる。
廊下を抜けてリビングに入ると、その正体が分かった。
リビングはN邸の横幅いっぱいに設えられた広いデッキテラスに面していて、その先にNさんのおばあちゃんが野菜をつくる畑が広がっている。風は光と共にこの大きな開口から取り込まれ、家の中を駆け巡って、玄関やお風呂などの小窓から抜けているようだ。
そしてもうひとつ。この家を駆け巡っているのが、白と黒、2匹のネコたち。リビングにはキャットタワーやキャットウォークが設置され、よく見ると、ネコと共生するための細かな工夫がいたるところに散りばめられている。
設計の初期段階では、あまり細かい要求をしなかったNさん夫婦だが、PLUS CASAから具体的なプランが提案されると、「ネコにとっての快適さ」についてのさまざまなアイディアが頭に浮かんできたという。「ネコにとって快適か、ということについつい力が入ってしまって、自分たちについてはあまり考えてなかった気がします」と笑うNさんだが、PLUS CASAの全ての住宅を実際に見て回るなど、時間と情熱をかけて家づくりをしている。隣りに暮らす両親の様子が、階段口の小窓から漏れ見える光で分かるようになっているなど、ヒトのための生活の場としての、小さいが大切な配慮も随所に見ることができる。
全国で、およそ1200万匹のネコがヒトと一緒に暮らしているそうだ。自分たちのために設計された家に暮らしているネコが、そのうち何匹いるだろうか。幸せなネコたちは今日もタワーを駆け上がり、キャットウォークを走り回っていて、Nさんたちは心地よい風と小さな足音を楽しみながら、リビングで寛いでいる。
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