第11回JIA中国建築大賞2019

智頭宿 楽之」が、第11回JIA中国建築大賞2019 一般建築部門において特別賞を受賞し、広島で開催された表彰式に行ってきました。

高校1年生のとき、将来デザインの仕事がしたいという漠然とした理由で美大を目指し、美術研究所と言われる芸美大専門の予備校へ通い始め、そこで先輩に見せてもらった雑誌(a+u89:07号)に載っていたコープ・ヒンメルブラウ(ウィーンの建築設計事務所)の作品を知りました。それまで建築に固いイメージを持っていた私は、建築ってこんなに自由でいいんだ!と衝撃を受け、そのまま建築学科を志すことに。学生時代はバブル絶頂期の頃。当時憧れた建築家像は、次々と華美で前衛的な作品をつくり専門雑誌に掲載されるカリスマ建築家。いつか私もその華やかな建築家の仲間入りがしたい、と夢見てた自分が懐かしく思えます。

19年前、周囲の反対を押し切り小林の実家がある鳥取県智頭町(人口7,000人弱の小さな山間の町)へ京都から移り、2人で設計事務所を構えました。
当初は全く仕事も無く、心折れそうになる事も多々。建築家自体、この地で求められていないのでは?と感じる閉ざされた環境。
でも、ここで暮らす以上、きっと私達の使命があるはずと信じ、ここでしか出来ないこと、この町だからこその解決方法を提案する必要性を伝え続けてきました。建築家として、子供達が誇れる町にしたい。また田舎でも設計を生業として暮らしていけることを立証したい。そのために何が出来るのか?そんな想いだけで突き進んで来たように思います。

「智頭宿 楽之」の設計中も、クライアントとこの町の課題や思い描く将来像などを話し合い、この場を開き集える空間となるよう、何度も対話を重ねました。
竣工し開店してからも想いを共有する仲間が次々と繋がり、この小さな町にも新たな息吹をもたらす感覚を得るようになってきています。

審査委員長の古谷誠章さんが、『地域に1人建築家がいて、その地域のことをずっと考えていてくれることが大切だ』と講評で言っていただいたことや今回の評価が、“私達が描く未来は間違っていない、このまま進み続けるように!”と背中を押していただいているように感じています。

この地で求められる建築家像は、あの頃憧れた華やかなものではありません。でも、誰よりも豊かな環境で建築に取り組めていると自負しています。
審査員の先生方に、智頭町の展開をまた何年後かに披露できるよう頑張り続けたいと思います。

また、クライアントを始め、この建築に関わっていただいた全ての皆様に感謝いたします。ありがとうございました。

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